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なら学研究会

奈良女子大学文学部「なら学プロジェクト」のワーキンググループ「なら学研究会」の活動報告。奈良の研究史・研究者の回顧・再評価をおこなっています。

【雑誌紹介】観光の大和(奈良県観光連合会)

雑誌紹介

 B5判。昭和13年(1938)1月創刊。終刊年不明。昭和14年(1939)4月の2巻1号までの五冊が確認できている。奈良県観光連合会の編集発行になるもので、本誌はその「機関誌」(奈良県観光連合会事業要綱、下記)である。目次は以下の記事を参照されたい。

  今回参照したのは奈良県立図書情報館所蔵のもの。そのうち1巻1号から1巻4号はコピーを製本したもので、2巻1号のみを原誌で所蔵する(コピー製本の理由は不明)。「奈良県観光連合会事業要綱」(下記)によれば、本誌は「国会並ニ内外観光関係団体及業者ニ配布宣伝」(一イ)していたという。2017年2月15日現在、図書館はデータベース等により所蔵確認済みで、いまのところ奈良県立図書情報館一館のみが本誌を所蔵するが、「内外観光関係団体」や「関係官公署団体」等(奈良県観光連合会事業要綱)については未調査である。他機関等の所蔵をご存知の方はご一報いただきたい。

 奈良県立図書情報館所蔵の五冊はいずれも橿原文庫(旧県立橿原図書館)旧蔵で、「昭和〔十八〕年〔十二〕月〔二十九〕日/橿原文庫/番号 三〇五三(~五七)」(〔 〕内は万年筆書き)の朱印が捺されている。このときにまとめて橿原文庫に収められたらしいのだが、なぜこの時期なのだろうか。『奈良市史 通史四』(1995)によれば、「太平洋戦争が始まるに及んで観光は急に肩身が狭く」なってきて「昭和十七年(1942)、県では公園課と観光課を統合するとともに総務部に聖地顕揚課を置き、市もまた同年観光課を廃して厚生課観光係に格下げし、十九年には文化課観光係に縮小」したという(p.491)。けれども、紀元二千六百年にあたる昭和15年(1940)の「観光客は未曾有の数に達し」、また「大和観光自動車会社が設立され、翌十六年正月から大型バス十五台で営業を開始」(p.490)したというから、状況からすれば2巻1号(昭和14年4月)以降も観光連合会の機関誌が刊行されていてもおかしくはない。このあたりの事情、いずれも詳らかではない。

 発行母体である奈良県観光連合会は、「観光協会や保勝会のほか、旅館・名産店など約30の県下の観光団体を組織して」昭和9年(1934)に結成された「大和観光地連合会」を昭和11年(1936)に改称したもので、昭和15年(1940)の紀元2600年を見すえて県が組織した団体である(『奈良市史 通史四』、p.488)。1巻1号後表紙に「国民精神総動員/奈良県観光連合会」とあることや、「体位向上運動と国民精神総動員の国策線にそふて身心鍛錬の絶好地である吉野郡山の再検討のため」云々という文言(1巻3号編輯後記)などからも本誌の背後に横たわる思想は明らかである。

 そうした背景や周辺事情、「聖地大和」を幻想させるような寺社や自然のコンテンツ化、またそのまなざしゆえに見落とされ排除された事象も多くあったはずで、本誌をそうした文脈に定位することはたやすい(目次よりそれは明らかだ)。けれどもその一方で、雑誌編集の過程で再発見・再評価されたことはなかっただろうかとも思う。原誌調査、行政文書等の調査もふまえながら本誌をきちんと評価するような研究が待たれるのである。

参考資料

奈良県観光連合会加入団体(1巻1号、p.64)

 (括弧内は理事)

室生寺(住職 荒木良仙)

大阪鉄道株式会社(運輸課長 澤井元之)

信貴山朝護孫子寺(住職 田中真叡)

生駒郡龍田川保勝会(龍田町長 下村虎三)

生駒郡平群村(平群村長 上田利一)

磯城群長谷寺保勝会(初瀬町長 吉田長敬)

奈良市観光課(課長 橋本繁治)

生駒郡生駒町(生駒町長 中塚荘八)

吉野郡吉野川保勝会(下市町長 藤村三郎助)

吉野ケーブル自動車会社(社長 日高昇)

磯城群多武峰保勝会(宮司 高橋城司)

吉野町吉野町長 坂本彌十郎

郡山保勝会(郡山町長 戸口米次郎)

生駒郡三郷村三郷村長 石井庄次郎)

宇陀郡榛原町榛原町長 岡本太蔵)

高取町保勝会(会長 鈴木正雄)

北葛城郡二上村(二上村長 船木寛)

若草山保勝会(会長 関信太郎)

大阪電気軌道株式会社(常務取締役 三好萬次)

吉野郡川上村柏木保勝会(会長 村井乙次郎)

天理教(天理中校長 諸井慶五郎)

生駒郡矢田山金剛山寺保勝会(会長 澤井源之助)

奈良電気鉄道株式会社(運輸課長 佐藤治)

龍泉寺保勝会(住職 羯磨直弘)

奈良ホテル(支配人 酒井順一)

生駒山宝山寺(住職 駒岡乗圓)

添上郡月ヶ瀬保勝会(月瀬村長 前田市次郎)

添上郡柳生村芳徳寺(住職 橋本定芳)

奈良市観光協会(会長 松井貞太郎)

高市郡畝傍町顕揚会(畝傍町長 小松茂作)

磯城名勝保勝会(会長 富田宇市郎)

吉野郡天川村天川村長 堀口吉太郎)

当麻寺(住職 川口光温)

吉野郡上北山村(村長 中岡理一)

国分寺(住職 田村澄善)

信貴生駒電鉄株式会社(運輸課長 野村慶次)

大和鉄道株式会社(運輸課長 武田清之助)

高市郡高市村(高市村長 脇本熊治郎)

南葛城郡葛城村金剛山顕彰会(神職 葛城貢)

丹波市町保勝会(丹波市町長 中山愷男)

三輪大神々社(宮司 田上豊策)

宇陀郡高城顕彰会(会長 津越勝)

奈良県観光連合会加入会員(1巻2号、p.53)

高市郡畝傍町顕揚会 畝傍町長 小松茂

高市郡高市村 高市村長 脇本熊治郎

高取町保勝会 会長 鈴木正雄

北葛城郡二上村 二上村長 船木寛

当麻寺 住職 川口光温

国分寺 住職 田村澄善

大阪電気軌道株式会社 常務取締役 三好萬次

大阪鉄道株式会社 営業課長 田中善一

奈良電気鉄道株式会社 運輸課長 佐藤治

大和鉄道株式会社 運輸課長 武田清之助

奈良市観光課 課長 橋本繁治

奈良市観光協会 会長 松井貞太郎

奈良ホテル 支配人 酒井順一

若草山保勝会 会長 関信太郎

添上郡月ヶ瀬保勝会 月瀬村長 前田市太郎

添上郡柳生村芳徳寺 住職 橋本定芳

郡山保勝会 郡山町長 戸口米次郎

信貴生駒電鉄株式会社 運輸課長 野村慶次

生駒町宝山寺 住職 駒岡乗圓

生駒郡生駒町 生駒町長 中塚荘八

生駒郡龍田川保勝会 龍田町長 下村虎三

生駒郡三郷村 三郷村長 石井庄太郎

生駒郡平群村 平群村長 上田利一

信貴山朝護孫子寺 住職 田中真叡

生駒郡矢田山金剛山寺保勝会 会長 澤井源之助

磯城郡長谷寺保勝会 初瀬町長 吉田長敬

磯城郡多武峰保勝会 宮司 高橋城司

磯城郡名勝保勝会 会長 富田宇市郎

天理教庶務課 東井三代治

丹波市町保勝会 丹波市町長 中山愷男

室生寺 住職 荒木良仙

宇陀郡榛原町 榛原町長 岡本太蔵

宇陀郡高城顕彰会 会長 津越勝

三輪大神々社 宮司 田上豊咲策

吉野町 吉野町長 坂本彌十郎

吉野郡天川村 天川村長 堀口吉太郎

吉野ケーブル自動車会社 社長 日高昇

吉野郡吉野川保勝会 下市町長 藤村三郎助

吉野郡川上村柏木保勝会 会長 村井乙次郎

龍泉寺保勝会 住職 羯磨直弘

上北山村 村長 中岡理一

奈良自動車株式会社 社長 関信太郎

吉野熊野国立公園協会 副会長 羽根増次郎

東大寺 管長 鷲尾隆慶

春日神社 宮司 秋岡保治

高田町 町長 井上松蔵

奈良県観光連合会役員名簿(1巻3号、前付)

会長  知事 三島誠也

副会長 総務部長 八田三郎

顧問  学務部長 床次徳二

同   警察部長 青木秀夫

同   経済部長 乾武

同   奈良市水門町 関信太郎

同   奈良市菩提町 木本源吉

同   奈良市長 松井貞太郎

同   奈良市北御門町 鍵田忠治郎

参与  土木課長 平井重市

同   ■務課長 久慈隆元

同   保安課長 中川嘉和

同   商工課長 吉川善治郎

同   社寺兵事課長 横山浅治郎

同   教育課長 河野栄蔵

同   観光課属託 新井和臣

理事長 観光課長兼公園課長 坂田静夫

理事  奈良市観光課長 橋本繁治

同   高市郡畝傍町長顕揚会々長 小松茂

同   吉野町吉野山保勝会々長 坂本彌十郎

同   生駒町長 中塚荘八

同   大阪電気軌道株式会社 中村勇次郎

同   磯城郡初瀬町長谷寺保勝会長 吉田長敬

同   参宮急行電鉄株式会社 泉市郎

同   奈良電気鉄道株式会社 佐藤治

同   大阪鉄道株式会社 田中善一

同   丹波市町 中山愷男

奈良県観光連合会事業要綱(1巻3号、前付)

一.宣伝ニ関スル事項

イ.機関誌「観光ノ大和」ヲ年四回発行シ県内各地方ノ年中行事及四季ノ行楽ノ紹介宣伝ニ努メ会国並ニ内外観光関係団体及業者ニ配布宣伝シ観光報国ノ実績ヲ挙グルコト

ロ.時々県下一般案内記又ハ特殊産物美術工芸品史実伝説公園便覧等ニ関スル和文及欧文ノ叢書案内記等ヲ刊行シ内外観光関係者ニ配布スルコト

ハ.ポスター、リーフレット、パンフレット、絵葉書、地図、漫画、映画等ヲ作製シ紹介宣伝用ニ供スルコト

ニ.史蹟、産業、交通系統ヲ内外ニ紹介宣伝スルコト

ホ.新聞、雑誌等ノ広告及宣伝記事ノ掲載ヲナスコト

ヘ.関係官庁及公共団体トノ連絡ヲ計リ其他各地観光協会トノ間ニ「観光ブロツク」ヲ形成シ内外宣伝ノ効果ト観光客ノ利便ニ供スルコト

ト.本件観光ノ特異性ニ鑑ミ観光客ノ接遇ニ留意シテ観光教育ノ目的達成ニ努力セントス

二.接遇ニ関スル事項

イ.観光地商工業者ヲ始メ一般接客業者及其ノ使用人ノ観光知識及教養ノ普及指導ヲナスコト

ロ.内外観光客ニ対シテ観光地及其ノ日程ニ関シ相談斡旋ノ労ヲ執ルコト

ハ.案内人及交通従業員ニ観光客接遇ニ対スル信念ヲ教養訓練シ且ツ指導啓発スルコト

ニ.特殊観光団体ノ接遇ニ関シ関係官公署団体ノ鞭撻並ニ助力ヲナスコト

ヘ.旅館ノ接遇設備並ニ料金等ノ改善ヲ図ルコト

ト.交通系統ノ改善ニ尽力スルコト

三.施設ニ関スル事項

イ.案内所及観光館ノ開設充実ニ尽力スルコト

ロ.観光地指導標及里程標和欧文標識案内板等ヲ設置スルコト

ハ.観光地ニ於ケル休養並ニ簡易施設ノ充実ニ努ムルコト

ニ.山岳林間ニキヤンプ場ノ設定並ニ簡易施設ノ充実ニ努ムルコト

ホ.観光地ノハイキングコースノ開拓施設ヲ行フコト

ヘ.観光道路ノ景観的改善施設ノ実施ニ努ムルコト

ト.新観光地ノ開発及施設ニ関シ其ノ充実ヲ期スルコト

以上ノ外観光事業ノ一般ニ関シテハ各地観光団体並ニ県内ノ諸団体トノ連絡統制並ニ助成ニ力ヲ致シ観光客誘致ト産業ノ開発ニ資スル行為ニ協力スルノ外事業ニヨリテハ本連合会単独ニ事業ノ促進達成ニ尽力スルコト

奈良県観光連合会々則(1巻1号、p.64)*1

第一条 本会ハ建国大和ノ史蹟ヲ宣揚シ以テ国民精神作興ニ資シ併テ県下観光地ノ宣伝及観光施設ノ連絡統制ヲ計ルヲ以テ目的トス

第二条 本会ハ奈良県観光連合会ト称シ事務所を奈良県庁内ニ置ク

第三条 本会ハ其目的ヲ達成スル為左ノ事業ヲ行フ

(一)史蹟ニ関スル講演会、ポスター、パンフレツト、リーフレツト、其ノ他宣伝印刷物ノ刊行

(二)県下各観光施設ノ連絡統制

(三)景勝地ノ調査研究

(四)其ノ他本会ノ目的達成ニ必要ナル事業

第四条 本会ハ左ノ者ヲ以テ組織シ名誉会員及正会員ニ分ツ

(一)名誉会員 本会ニ功労アルモノ又ハ学識経験アルモノヨリ理事会ノ議ヲ経テ会長之ヲ推薦ス

(二)正会員 観光地ニ関係アル市町村及団体、観光関係事業者ニシテ理事会ノ推薦ニヨリ会長之ヲ承認シタルモノ

第五条 本会正会員ハ会費トシテ一年金弐拾円ヲ負担スルモノトス

第六条 本会ノ経費ハ左ノ収入ヲ以テ之ニ充ツ

(一)会費

(二)寄付金

(三)補助金

(四)其他ノ雑収入

第七条 本会ノ会計年度ハ四月一日ニ始リ翌年三月三十一日ニ終ル

第八条 本会ノ予算ハ毎年度開始前総会ノ決議ヲ経テ之レヲ定メ決算ハ翌年度ノ総会ニ於テ其ノ承認ヲ経ルモノトス

第九条 本会ニ左ノ役員ヲ置ク

(一)会長 壱名

(二)副会長 壱名

(三)理事 若干名

第十条 会長ハ奈良県知事ヲ副会長ハ同総務部長ヲ推薦ス 理事長タル理事ハ奈良県観光課長ヲ之ニ充ツ 其他ノ理事ハ総会ニ於テ之ヲ選挙シ其ノ任期ハ一年トス

第十一条 本会ニ初期若干名ヲ置キ会長之ヲ命ス

第十二条 会長ハ本会ヲ代表シ会務ヲ統轄シ会議ノ議長タルモノトス 副会長ハ会長ヲ補佐シ会長事故アルトキハ其ノ事務ヲ代理ス 会長副会長共ニ事故アルトキハ理事長之レヲ代理ス 理事ハ会務掌理ス 書記ハ会長ノ命ヲ受ケ会務ヲ処理ス

十三条 本会ニ顧問及参与若干名ヲ置キ会長之ヲ推薦ス 顧問ハ会長ノ諮問ニ応ジ参与ハ会務ニ参与シ共ニ総会及理事会ニ出席シ意見ヲ述フルコトヲ得

第十四条 会則ハ会員三分ノ二以上ノ同意ヲ得ルニ非サレハ変更スルコトヲ得

第十五条 総会ハ会長之ヲ招集ス 総会ハ会員総数三分ノ一以上出席スルニ非サレハ会議ヲ開クコトヲ得ス 総会ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス

第十六条 第八条第十四条以外ノ会務ハ理事会ニ於テ之ヲ代行セシムルコトヲ得 理事会ノ議長ハ理事長ヲ以テ之ニ充ツ

第十七条 理事会ハ必要ニ応ジテ会長之ヲ招集ス 会議ハ理事半数以上出席スルニ非サレバ開ク事ヲ得ス 理事会ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス

附則 本会則ハ昭和十二年四月一日ヨリ之ヲ実施ス

以上

*1:原文に句読点なし。以下、全角スペースをもって句点箇所とする。