なら学研究会

奈良女子大学なら学研究センターのワーキンググループ「なら学研究会」の活動報告。奈良の研究史・研究者の回顧・再評価をおこなっています。

【23】西村博美:折口信夫の大和

f:id:narastudies:20181023153845j:plain

【講師】西村博美氏(歌人

【演題】折口信夫の大和

【日時】2018年10月21日(日)14:00-16:30

【会場】奈良女子大学 文学系N棟3階 N339教室

【参加】10名 

【開催文】

奈良・大和の研究者・研究史を回顧・再評価する、第23回なら学研究会を開催します。

今回も前回・前々回に続き、奈良と文学をテーマにします。特に今回対象とするのは折口信夫(1887-1953)です。

折口は、民俗学者、国文学者、国語学者の顔をもち、釈迢空と号した歌人でもありました。そうした多面性は大和においても多くの人々に影響を与えました。

しかしそもそも、折口にとって大和とはどういう場所だったのでしょうか。それが彼自身にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。こうした視点から、折口という人間と大和の関係を調査研究してこられた西村博美氏(奈良民俗文化研究所研究員)に折口にとっての大和を語っていただきます。

【参加記】

なら学研究会ではこれまで奈良・大和を研究した人々の知のネットワークに関心の焦点をおいて研究を続けている。そのためには、当該の人物の思考の内実を探ることは避けて通れないし、ときにその人生にも目を向けながらその思想形成の襞を探ろうとすることも必要となるだろう。

奈良の研究者、教育者、そして市井の人々に大きな影響を与えた折口信夫。今回の研究会は、そうした折口にとっての大和経験ともいえるものに思いをいたすものとなった。

大阪に生まれた折口は、幼少期、大和に里子に出された、とされる。しかし本人もそのことについてはほとんど語らず、後年それをフィクションとして否定する人もいる。今回の講師・西村博美氏は、この事象を追って大和小泉の里を歩かれた。折口が残した歌の風景がまさにその小泉の風景と重なる。しかしそれは、生涯にわたって大和の里をくまなく歩いた折口の経験と相互に溶け合った心象風景なのかもしれない。当時の時代、大阪、里子、乳母、「しのぶ」という読み方を嫌い「のぶお」と呼ばれることを好んだ彼のアイデンティティ、そして「大和」。まさに「折口の大和」を垣間見たような時間であった。

折口の大和については、飛鳥との関係も看過し得ないと西村氏は指摘する。これについては、次回に持ち越されることとなった。