なら学研究会

奈良女子大学文学部「なら学プロジェクト」のワーキンググループ「なら学研究会」の活動報告。奈良の研究史・研究者の回顧・再評価をおこなっています。

【もくじ】『澤田四郎作博士記念 民俗学論叢』(昭和47)

昭和47年5月、沢田四郎作先生を偲ぶ会発行。編集は奥村隆彦・原泰根。

澤田四郎作は昭和46年5月18日歿(享年71)。偲ぶ会の発起人は、岩切彰・大江美ヤ子・大藤時彦後藤捷一・柴田実・高谷重夫・松井佳一・水木直箭・宮本常一。同書「はじめに」を以下に引用する。

はじめに

 昭和辛亥の初夏、澤田四郎作博士が惜しくも急逝されてから、はや一歳になろうとしている。

 博士が当時の東京帝国大学医学部の研究室を去って大阪玉出の地に開業されてからほとんど四十年、その間患家の信頼の篤い国手であったことはいうまでもない。没後にもなお、門を敲いて故人調合の薬を乞う人があり、御遺族を当惑せしめたという話は、博士に対する信頼の度を如実に物語るものであろう。

 また、年少の頃より生涯に亘って研究にいそしまれた民俗学については、「年譜」に見られるがごとき数多くの業績を残された。しかし、それにも増して、力を致されたのは後進の誘掖、学界への背後からの援助であった。近畿民俗学会々長として、戦後困窮の世に、みずからはシベリアよりの復員の直後という情況の中で『近畿民俗』を復刊、物心両面に亘る多大の犠牲を顧りみず、その続刊、会の維持発展に当られたのは人の知るところである。

 これに加えて、博士の包容力の大きな、あたたか味のある人柄は、民俗学界、医学界のみならず、多方面の人々を引きつけ、その客間は常に訪問者が絶えなかった。

 このたび、博士を記念するための文集の刊行を企てたところ、かくも多数の御賛同を得て、思わぬ大冊を成すに至ったのも、ひとえに博士の遺徳の致すところにほかならないであろう。ここに改めて博士の御冥福をお祈り申上げたい。

 終りに臨んで、稿を寄せられた各位にお礼申上げるとともに、この集の編纂については奥村隆彦氏、会の事務、印刷、刊行等については原泰根氏を始め、米谷金次郎氏、尾田正幸氏、萩原真佐子氏、浦西勉氏の近畿民俗学会員の方々の御尽力によるものであることを明記したい。

  昭和四十七年五月二十八日

     澤田四郎作先生を偲ぶ会

     発起人(略)

もくじ

伽の心意(一)—伽の字義—(庵逧巌) ・・・・・・ 1

天理市別所町の紅白当屋座と旧宮座(乾健治) ・・・・・・ 9

人狐(井上吉次郎) ・・・・・・ 18

麦搗唄の背景(牛尾三千夫) ・・・・・・ 25

大阪の庚申(奥村隆彦) ・・・・・・ 33

死者はどこへ行くか(佐藤米司) ・・・・・・ 41

ヨーロッパの民俗学民族学博物館を訪ねて(杉本尚次) ・・・・・・ 50

鐘と雨乞(高谷重夫) ・・・・・・ 57

新地木地屋の正月—大正時代を中心に—(橘文策) ・・・・・・ 66

七日盆と盆行事(田中久夫) ・・・・・・ 72

紀州岩出町の民俗—人生儀礼—(玉村禎祥) ・・・・・・ 88

先度講について(津田秀夫) ・・・・・・ 95

枕石の系譜(土居卓治) ・・・・・・ 103

柿をめぐる民俗考(永野忠一) ・・・・・・ 110

「糸取り婆」という遊び(夏堀謹二郎) ・・・・・・ 118

筒井招源丹—木地屋の医方と薬方覚書—(橋本鉄男) ・・・・・・ 132

近世における但馬農民の霊場順拝(日野西真定) ・・・・・・ 140

精進祭採訪記—三重県一志郡美杉村・三多気・杉平—(堀田吉雄) ・・・・・・ 149

民具学提唱(宮本常一) ・・・・・・ 155

丹波の寝僧(宮本正章) ・・・・・・ 163

ユの概念とその機能(一)(本永清) ・・・・・・ 167

日高の民謡(吉川寿洋) ・・・・・・ 174

正月の餅と大納言雑煮(渡辺正) ・・・・・・ 182

産室の火(大藤時彦) ・・・・・・ 185

百二歳山崎こふさ媼聞書(岸田定雄) ・・・・・・ 189

同姓部落の族制—近畿民俗学会・近江今津町共同調査報告—(竹田聴洲) ・・・・・・ 192

山でのことを忘れたか(谷垣桂蔵) ・・・・・・ 199

琴平宮にある「降神観」の額(鴻山俊雄) ・・・・・・ 208

かっぱのしりぬぐい—河童家伝薬の伝説—(若尾五雄) ・・・・・・ 209

中国古代の雨乞い(水原渭江) ・・・・・・ 218

祝神としてのテンパクさん(原泰根) ・・・・・・ 220

古代社会と女性祭祀(藤井英男) ・・・・・・ 229

東播磨における頭神事組織の一考察—兵庫県東条町吉井の場合—(吉田省三) ・・・・・・ 236

志摩の文楽人形についての研究—安乗人形座について—(倉田正邦) ・・・・・・ 244

涕泣儀礼—特に泣女について—(鎌田久子) ・・・・・・ 252

宮古(沖縄)の諺(保仙純剛) ・・・・・・ 259

桃太郎の郷土(関敬吾) ・・・・・・ 271

編集後記・事務局より ・・・・・・ 292

澤田四郎作博士記念民俗学論叢発刊の辞・奥付