- 【講師】西村博美氏(歌人)
- 【演題】折口信夫の大和(続)ー笹谷良造も含めてー
- 【日時】2018年12月23日(日)14:00-16:30
- 【会場】奈良女子大学 文学系N棟3階 N339教室
- 【参加】9名
【開催文】
【参加記】
今回のなら学研究会は、前回に引き続き、西村博美先生に折口信夫と大和の関わりについて話していただいた。
折口の祖父の生地は飛鳥であった。そのことが折口の生涯のなかで一つの重要な依拠点としてあり続けた。
なつかしき故家の里の 飛鳥には、千鳥なくらむ このゆうべかも
(『海やまのあひだ』)
折口にとってそれは、研究対象としての各地とはまた異なる、いわば心の拠り所としての象徴的な地(大和)とでもいうべきものであった。西村氏は、折口の作品や弟子の回想などを織り交ぜながら、半ば現実半ば彼のなかでの構築ともいうべき飛鳥、大和像についてわかりやすく説いてくださった。
今回の研究会では、折口門下で、奈良で活躍した笹谷良造についても西村氏に講じていただいた。「言葉」(民俗語彙と言い換えてもよいのかもしれない)に鋭い意識を向けた笹谷の学問は、民俗学と文学双方の研究者にとってきわめて刺激的である。いま省みられることが少ないこうした学問を再びひもとく必要を一同痛感した。
後半のディスカッションはいくつかのサプライズもあった。研究会の山上豊氏がご家庭のつながりで所蔵しておられた今宮中学の大正3年の卒業アルバムをご持参くださった。この年まで折口は今宮中学で教師をつとめていた。東京に発つ直前の、毅然とした表情の折口がそこにいた。
また参加者の一人は学生時代、笹谷家に下宿していたことをお話くださった。そのころすでに笹谷氏本人は他界していたが、笹谷夫人の思い出を語ってくださった。
今回も、言語学、民俗学、歴史学、文学、歌人、社会学など多彩な参加者があり、それぞれの分野での「折口」受容(とその困難さ)、それが後のそれぞれの学問に与えた/引き継がれなかった影響などについての話が出された。こうした文化サロンのような、本研究会の雰囲気や知的興奮をこれからも持続していきたいという思いを抱いて散会となった。