なら学研究会

奈良女子大学なら学研究センターのワーキンググループ「なら学研究会」の活動報告。奈良の研究史・研究者の回顧・再評価をおこなっています。

澤田四郎作研究記事一覧

リンクのないものは現在作成中です。

  1. 『「知」の結節点で 澤田四郎作 人・郷土・学問』(研究パンフレット)

 

【史料と論考】(リンク先よりダウンロードできます)
  1. 磯部敦・三浦実加「翻刻 澤田四郎作『日誌』(大正15年10月〜昭和2年4月)」(『なら学研究報告』5、奈良女子大学大和・紀伊半島学研究所なら学研究センター、2020.12)
  2. 磯部敦・汪少雯・小泉紀乃「翻刻 澤田四郎作『日誌』(昭和8年分)」(『なら学研究報告』1、奈良女子大学大和・紀伊半島学研究所なら学研究センター、2019.5)
  3. 磯部敦・三浦実加「翻刻 澤田四郎作『日誌』(昭和9年分)」(『なら学研究報告』3、奈良女子大学大和・紀伊半島学研究所なら学研究センター、2020.8)

    ※ 上記翻刻について、以下の正誤表もあわせて参照されたい。

  4. 磯部敦・汪少雯・小泉紀乃「澤田四郎作『日誌』における「記録」の累積と循環」(『叙説』47、奈良女子大学日本アジア言語文化学会、2020.3) 
  5. 磯部敦・岩坂七雄・樽井由紀・寺岡伸悟・山上豊「宝塚澤田家所蔵澤田四郎作史料目録」(『なら学研究報告』6、奈良女子大学大和・紀伊半島学研究所なら学研究センター、2021.6)

 

【単行本目次】
  1. 『日本生殖器崇拝概論』(私家版、1922/大正11)
  2. 『無花果』(坂本書店、1926/大正15)
  3. 『ふるさと』(私家版、1931/昭和6)
  4. 『大和昔譚』(私家版、1931/昭和6)
  5. 『柳田國男先生』(澤田四郎作編・近畿民俗学会発行、1962/昭和37)
  6. 『晴雨日記調』(私家版、1967/昭和42)
  7. 『山でのことを忘れたか』(創元社、1969/昭和44)
【雑誌目次】
  1. 『Phallus Kultus』1〜15(私家版、1924/大正13.4〜1926/大正15.7)
  2. 『五倍子雑筆』4〜24現存(写本、1927/昭和2.2〜1935/昭和10頃か)
  3. 『五倍子雑筆』1〜13(私家版、1934/昭和9.7〜1954/昭和29.10)
【その他】
  1. 博士論文「緑膿菌の色素産出に関する研究」(東京帝国大学、医学博士、1931/昭和6)
  2. 『育児と民俗』(抜き刷り、1963/昭和38)
  3. 『澤田四郎作博士記念文集』(澤田四郎作先生を偲ぶ会、1972/昭和47)
  4. 『澤田四郎作博士記念 民俗学論叢』(澤田四郎作先生を偲ぶ会、1972/昭和47)
  5. 『五倍子遺歌集 面影』(澤田幸、1977/昭和52)

【11】なら学研究報告11号

『なら学研究報告』11号を公開しました。

  • タイトル:【資料紹介】戦後奈良北部の農村史『田原村史』
  • 著者等 :陌間紗佳(はざま・さやか)
  • 掲載誌等:なら学研究報告, 11, pp.1-18
  • 公開先 :奈良女子大学学術情報センター
  • http://hdl.handle.net/10935/6027

今回は、本学文学部人文社会学科文化メディア学コースの陌間紗佳さん(3回生, 20240226現在)による報告です。

なら学研究会では田原地区公民館所蔵の『月刊田原』等の撮影調査をおこなっており、『田原村史』は地区調査の基礎文献となります。『田原村史』はWebで公開されてはいますが、陌間報告は、その細目や村史の意義について紹介しています。

 

■ 付記

『なら学研究報告』1〜10号については、以下の記事をご覧ください。

【おしらせ】なら学イベント2点

大和・紀伊半島学研究所一般共同研究成果報告会

  • 2月22日(木)13:00〜17:00
  • 奈良カレッジズ交流テラス(奈良女子大学内、抽選20名)、およびオンライン(抽選なし)で開催

なら学研究センターを含む3センターの公募型共同研究の成果報告会を行います。講演内容や申込方法などの詳細については、大和・紀伊半島学研究所HPで随時アップしていきます。

 

奈良県内で試行している大学・地域の共創型連携の社会実験(奈良型エクステンション)成果報告会

  • 3月25日午後
  • 交流テラス(奈良女子大学内)、およびオンラインで開催

詳しくは、奈良カレッジズ連携推進センターブログで随時アップしていきます。 

下北山村教育委員会との共同研究

9月12日(火)〜15日(金)にかけて、下北山村歴史民俗資料館に調査に行ってきました。

下北山村出身の建築家西村伊作が設計した旧桑原医院を移築した歴史民俗資料館

この調査は、下北山村教育委員会との共同研究の一環としておこなったもので、下北山村歴史民俗資料館所蔵の未整理史料の整理、撮影(および撮影データの整理)、史料書誌入力をおこない、同時にこうした史料の保存や利活用について話し合い検討することを目的としています。期間は2023年度間で、研究代表者は磯部敦(文学部)がつとめています。

史料整理は2023年3月と6月に磯部と寺岡伸悟教授(文学部)とで終えることができたので、8月から本格的調査を! という予定でしたが、大雨の影響で中止。この9月が第一回目となりました。年貢関係、人別帳などは磯部も寺岡も専門外で、こういう機会でもなければ手に取ることなどない史料群ではありましたが、人の移動などが見てとれてとても興味深い史料群でした。いろんな史料に積極的に触ってみるものですね。

生史料のアウラを浴びながら撮影作業をおこなう

今回の出張調査では、磯部と寺岡のほか、学生3名が同行して撮影と書誌入力をおこないました。学生たちのがんばりもあって、予定より大幅に撮影が進みました。

昼食時や休憩時間には村内を案内してもらったり、ツチノコ共和国に潜入してみたり。夜は夜で地の物を食べ、温泉でゆっくりと疲労回復。下北山村、最高でございます。

蛭に怯えつつ分け入る......

資料館前の澄んだ川辺。とても美しい......

種々ご配慮くださった関係者のみなさまに、心より感謝申しあげます。

早朝の散歩。池原橋より。これまた美しい......

【37】近世大和に存在した観光案内人

【テーマ】「近世大和に存在した観光案内人」

【講師】安田真紀子氏(奈良からくりおもちゃ館館長、奈良大学講師)

■ 日時 2023年9月10日(日)14:00〜

■ 形態 オンライン

■ 参加 20名(途中の出入りあり)

本研究会で講師の安田真紀子氏は、近世資料を提示しながら江戸時代に大和に存在した3種類の「観光案内人」について詳しく語ってくださった。

奈良町を中心として案内を行った人々、大和の大社寺を起点として案内した人々、さらに、伊勢詣の人々の大和巡りを荷持ちを兼ねて付き添い、吉野・高野をへて大阪まで案内した人々。彼らと地元の宿や土産物屋、社寺、さらに奉行所などとの関わりつつ、その人数を拡大していったこと様子は、現在我々が目にする旅行業との類似性すら感じさせるものでした。しかしその一方で、幕末から明治への変動期を経て、これらの人々が、明治期に登場する観光案内人と連続するものなのか否か、などについては、参加者からも様々な意見や議論がでたが、これからの課題として残った。多彩な観光案内人の生態に興味の尽きない時間でした。

今回は、静岡、東京など、全国から関心を寄せる方が参加くださった。こうした近世の観光案内人が他地域ではどのような存在であったのか、日本の観光史研究において興味深い提起を含んでいた。

近世大和に存在した観光案内人(なら学研究会 #37)

第37回なら学研究会(ヤマキイサロン)のご案内

現代の奈良にとって重要な時代であるにもかかわらず、研究蓄積の少ない近世。今回は、近世大和に存在した観光案内人について、安田真紀子先生にご紹介いただきます。

近世の観光案内人といえば御師(おし)が知られていますが、大和では、それとは異なる観光案内人が複数の層で存在していました。日本観光史、近世交通史にとっても興味深いテーマになると思います。ぜひとも、ふるってご参加ください。

  • テーマ 近世大和に存在した観光案内人
  • 講 師 安田真紀子
    専門は日本近世史。「実験歴史学」を掲げた奈良大学鎌田道隆研究室で学ぶ。奈良大学講師、奈良からくりおもちゃ館館長。

  • 論文・講演多数(以下は奈良大学リポジトリ公開論文) 

日程等

  • 日時 2023年9月10日(日)14:00〜16:00(終了予定)
  • 実施方法 オンライン(zoom)
  • 事前登録をお願いしております
    参加ご希望の方は以下から事前登録し、zoomのURLを取得してください。 登録後、ミーティング参加に関する情報の確認メールが届きます。 

その他

  • 主催 大和・紀伊半島学研究所なら学研究センター
  • 協力 文学部なら学プロジェクト
  • 問い合わせ narastudy*cc.nara-wu.ac.jp(*を半角@に変更してください)
  • 今回から大和・紀伊半島学研究所の3センターで実施する研究会(セミナー)は、「ヤマキイサロン」という共通呼称を冠することとなりました。

【36】奈良の地誌研究における、最新の判明事項と研究の諸問題

【テーマ】「奈良の地誌研究における、最新の判明事項と研究の諸問題」

【講師】大塚恒平氏(Code for History 代表)

情報学、地理学、郷土史。地図技術者20年の経験から、古地図アプリMaplatを完成させる。Maplatの活用事例検討のために郷土史に取り組み始め、歴史学の諸問題をITの力も用いて解決する活動 Code for History を提唱。

■ 日時 2023年2月5日(日)14:00〜

■ 形態 オンライン

■ 参加 20名(途中の出入りあり)

講師の大塚恒平

□ 参加記録

伝承とは、文字どおり「伝」える者と「承」ける者の行為をあらわしているが、伝言ゲームがそうであるように、結果と起点が同じであることを意味してはいない。では、なぜ今そうあるのか。いつからそうなのか。そんな疑問から出発し、文献の性格をふまえて読み解いていくことで、その伝承の成立と変遷の過程に迫ることができる。

大塚氏の事例報告、

  1. 高畑鬼界ヶ島と菖蒲池町称名寺重文薬師如来立像の来歴
  2. 京終天神社(飛鳥神社)の来歴、由緒
  3. 東大寺遅速院重文地蔵菩薩立像と、惣持院「文使の地蔵」の調査

は、そうした謎に対して文献実証的にアプローチしたものだった。高畑本薬師附近に見られる「鬼界ヶ嶋」「奥芝辻へひける」という記述に気づいた大塚氏は、他の絵図による土地記述を検証し、地誌や日記類における伝承記述を寺家列に検証していくことで、薬師如来の移動を跡付けていく。そして、これまで看過されてきた原因として、諸史料への目配り(非横断性)と明治時代という時代の特異性に言及する。

【参考】古地図コレクション(国土交通省国土地理院)公開『和州奈良之図』(絵図屋庄八、天保15)。右肩「和州奈良之図」の左近辺に注目されたし。

この、史料の非横断性は、奈良の地誌が二桁にも及ぶという特異性にも起因しているというが、丁寧に比較検証してみれば、まったく同じではないことが分かるという。その裂け目にこそ、とっかかりがあるのだと。その方法は文献実証的でスリリングかつ興味深いものであった。

最後に大塚氏は、こうした特性をふまえながら研究史料やデータベースのオープン化を提唱した。報告後の質疑応答の時間でも司会のほうから「シチズン・サイエンス」の話がなされたが、近年のデジタルデータベースにおけるコンテンツの充実や検索性の飛躍的な向上は、そうした共有・協同環境を支えるインフラとして機能するだろう。

思えば、なら学研究会がメインテーマとしてきた「奈良」をめぐる研究史も、いわゆるアカデミアに限らない、その融合の上に成り立ってはいなかっただろうか。澤田四郎作然り、高田十郎然り、である。むろん、大学が地域で担ってきた/期待されてきた役割などもあろうが、大塚氏の報告をこうした郷土研究・地域研究の系譜で捉えてみると、〈知〉の協同を考えるうえで示唆的であったとも思うのである。

ご発表中の大塚氏